ポルシェの形をしたパビリオン - 片持ちのシェルに構造的合理性はあるか?

ベルリンから高速列車でおよそ1時間,ヴォルフスブルク (Wolfsburg) は、ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンの企業城下町です.中央駅から川を隔てたすぐ脇に,工場兼,テーマパークであるアウトシュタット(Autostadt)“自動車の街”があり,今回紹介するのは,この敷地内に2012年に建てられたポルシェ・パビリオン(Porsche Pavilion)です. 意匠がヘン・アーキテクテン(Henn Architekten)で,構造はシュライヒ(schlaich bergermann und partner).私事ですが,ベルリンの大学で論文を執筆している際に,人手が足りないということで,このパビリオンの構造設計に末席で携わりました.なので少々思い入れがある建築です. パビリオンの内部は,ホールになっていて,楕円曲線を描くランプを降りながら,ポルシェとその歴史を体験できるようになっています. フォトジェニックで,人目を引く形態のモノコック構造のシェル.名前の通り,ポルシェのデザインをオマージュしたもので,ラグーンの水面上に約25m張り出しています.設計施工全てを約1年で終わらせなくてはならず,随分と慌ただしいプロジェクトでした. このパビリオンでは,片持ちのシェルという大まかなデザインが決まった段階で,構造エンジニアを選ぶコンペが行われました.なぜわざわざそのような形を取ったのか.それは,これだけの規模の屋根を張り出させるには,エンジニアリングが重要になるからです. 多くのトップエンジニアが参加した中で,アルミニウムとカーボン繊維の複合構造による新しいシェル構造を提案したマイク・シュライヒが選ばれました.シュライヒは,ベルリンのクリスチャンガーデンでアルミ鋳物,大学の研究室でカーボン繊維の吊床版橋を設計・施工した経験があり,提案に十分な説得力を持たせられたようです. 「非常に軽いアルミニウムと高強度のカーボン繊維による超軽量シェル」は聞くだけで非常に魅力的な提案でしたが,このプロジェクトは上述したように設計施工期間が非常に限られていたため,残念ながら実現しませんでした.特に,カーボン繊維の使用の承認を取るのに時間がかかることがネックだったようです. 代わりに提案されたのは,シュライヒが得意としているスチールによるグリッド・シェル.しかし,シェルとして成り立たせるためには,曲率が小さ過ぎました. さて,どうするか.そこで選ばれたのが,ステンレス鋼によるモノコック構造でした.モノコック(仏語:monocoque)構造とは、「自動車・鉄道車両・ミサイル・一部の航空機などの車体・機体構造の一種で、車体・機体の外板に応力を受け持たせる構造」(Wikipedia“モノコック”より)です. スケルトン図がArchdailyにありましたので,興味のある方は御覧下さい.>スケルトン図 外板の厚さは基本的には10mmで,片持ちの根元の応力の高いところでは16mmまで増加させています.ステンレスなので高い耐候性を持ち,デザインとしてシェル表面に求められたモノリシックな風合いも,外板を溶接させることにより実現しています....

ハイテックでエコなのに“クールな”住宅

先日,ヴェルナー・ゾーベック(Werner Sobek)率いる,シュトゥットガルト大学の軽量構造デザイン研究室(ILEK)が設計した実験住宅,Energy Effizient Haus plus(Efficiency House Plus with Electromobility)を見学してきました. 2010年に(日本の国交省あるいは環境省などにあたる)ドイツ連邦のBMVI(Bundesministerium für Verkehr und digitale Infrastruktur)によって行われたコンペで選ばれ,2011年にベルリンに建設されました.環境に配慮したいわゆるエコ建築で,これからの新しい住環境の提案といった未来志向の住宅です. 竣工後約一年間,実際に一家族が住んで,エネルギーの収支などをモニタリングしていました.夫婦に子供二人の4人家族で,「典型的なドイツの一家族」として,希望者の中から抽選で選ばれたそうです.実験の性質上,実際の住居状況に近くなくてはいけないため,通勤・通学の距離や車や自転車を使う頻度なども考慮されたとのこと.2014年夏より,二組目の家族の入居が始まります.現在はその間の期間で,一般に公開されています. 一階リビングルーム 左に見えるのがキッチン...
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