先日,ヴェルナー・ゾーベック(Werner Sobek)率いる,シュトゥットガルト大学の軽量構造デザイン研究室(ILEK)が設計した実験住宅,Energy Effizient Haus plus(Efficiency House Plus with Electromobility)を見学してきました. 2010年に(日本の国交省あるいは環境省などにあたる)ドイツ連邦のBMVI(Bundesministerium für Verkehr und digitale Infrastruktur)によって行われたコンペで選ばれ,2011年にベルリンに建設されました.環境に配慮したいわゆるエコ建築で,これからの新しい住環境の提案といった未来志向の住宅です. 竣工後約一年間,実際に一家族が住んで,エネルギーの収支などをモニタリングしていました.夫婦に子供二人の4人家族で,「典型的なドイツの一家族」として,希望者の中から抽選で選ばれたそうです.実験の性質上,実際の住居状況に近くなくてはいけないため,通勤・通学の距離や車や自転車を使う頻度なども考慮されたとのこと.2014年夏より,二組目の家族の入居が始まります.現在はその間の期間で,一般に公開されています. 一階リビングルーム 左に見えるのがキッチン...
前回のゲンゼバッハ高架橋(1,2)と同じく,Ebensfeld‐Leipzig/Halle間の高速新線上にあり,ほぼ同時期に施工されたのが,このウンシュトルト高架橋(Unstruttalbrücke)です. シュライヒ・ベルガーマン&パートナー事務所とドイツ鉄道が基本設計.580mの長さの10径間のPC箱桁を1ブロックとして,4つのブロックが連なった全長2668mのセミ・インテグラル橋梁です. 目立つのは、各ブロックの中央にある108 mのアーチ.このアーチはスパンをとばすためのものではなく,主に制動荷重を受け持つためのものです.橋脚は非常にスレンダーな壁式で,橋軸直角方向へは剛でありながら,橋軸方向にはある程度の柔軟性を持たせて,温度変化などによる拘束力に対応させています. ゲンゼバッハ高架橋同様,この橋も,当初は支承の上にPC箱桁を載せた標準的な設計でした.アーチ構造は,当初からほぼ同じ規模と位置で構想されていましたが,同様に支承を介して桁と接続させていました. このような標準設計のものであっても,この長くて,比較的深い(高さ約50m)谷においては,“技術的にも美観的にも十分許容できるレベル”[1]でした.しかし,セミ・インテグラル構造とし,不連続面や支承をなくすことによって,より経済的で美しい橋梁になりました.また,橋脚もかなり細くすることができました. つまり,この鉄道橋は,シンプルな見た目の割には,かなり高度な技術を用いて設計されています.拙訳「Footbridges - 構造・デザイン・歴史」において,「これ以上にシンプルな解決策は望めないと思わせるようなデザインは、シュライヒ・ベルガーマン&パートナーの特徴である」という一文がありますが,まさにこの橋はシュライヒらしいデザインです. それはそれとして,私はこの橋を見た時に「シュライヒ事務所というよりは,実にヨルク・シュライヒらしいデザインだなぁ」と思いました. 何が“ヨルク・シュライヒらしい“のか.以下,ヨルク・シュライヒの造形力について思うところを,少しだけ書いてみます. まず,橋梁エンジニアにとってのデザインとは何か?ということから考えてみます. 少々乱暴に言ってしまえば,エンジニアのデザインは,与えられた条件に対して合理的な解決策を求めようとすることから始まりますが,これは技術的なアプローチといえます.そして,その与条件によって自由が制限された中で,エンジニアは始めて形を恣意的に操作する.これを美観的なアプローチと考えると,エンジニアのデザインとは,大雑把に言えば,この技術的,そして美観的なアプローチという二段階から成り立っている,と捉えられます.(勿論,デザインという行為は,大抵は行ったり来たりの循環作業であるし,2つがオーバーラップしていたりするので,そう簡単に言い切れませんが.) ウンシュトルト高架橋に関して言えば,基本設計で全体の形がほぼ決まっている中で,構造的な合理性や経済性からセミ・インテグラル構造を採用したのは,技術的なアプローチと言えます. 一方で,このアーチは上述したように,制動荷重などを受け持つためのものなので,構造的な合理性から考えれば,必ずしも曲線である必要はありません.つまり,ここに曲率をつけたことやアーチの足元を2つに分けてやや広げたことなどは,美観的なアプローチと言えます.(無論,足を広げることによって 橋軸直角方向に対しても安定させていますが.) つまり,少々強引ですが,このアーチの形から,ヨルク・シュライヒの美観的なアプローチによるデザイン,つまり造形力が見て取れるわけです. 初めてシュライヒの初期の作品集を見た時,その高度な技術が織りなす構造デザインの豊かな世界に圧倒されました.しかし同時に,シュライヒの作品からは,例えばカラトラバやカルロス・フェルナンデス・カサードなどの橋から感じるような,研ぎ澄まされた“普遍的な美”といったようなものはあまり感じませんでした.シュライヒの造形は非常に独特であると言えます.私は,ヨルク・シュライヒの作品の魅力は,造形美ではなく,複雑な境界条件を「これ以上にシンプルな解決策は望めないと思わせるような」技術的アプローチで解いているという点にある,と考えています....
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