今年の6月に出版された「ヨーロッパのドボクを見に行こう」を著書の八馬さんよりご恵贈いただきました.著者が実際に訪れたヨーロッパの「ドボク」構造物を,旅行ガイドブックという形で紹介した他に類を見ない本です.
「ドボク」とは,「2008年に生み出された概念で,土木構造物のみならず産業施設や建築物も含めた社会基盤として捉えられる対象物全般に,愛情を込めて名付けられたもの」(本書より)です.このドボク界隈の賑わいは,土木界隈からも無視できないほどのものになっていまして,私自身も以前よりネットでその盛り上がりを見聞きしていました.
ドボクは,対象物への愛を何のオブラートにも包まずに露出している(ように私からは見える)点が面白いと常々思っています.ナイーブな自分を見られることを嫌う人は多いですが,ドボクの方々には,その愛への確固たる自信が感じられます.
本書もそんなドボクあるいは土木への愛に満ち溢れた本でありますが,著者がプロの土木デザイナーである点が面白いところ.コルビュジェやカラトラバの建築や,シュライヒやメンの橋をプロ的な観点から論じられているかと思えば,巨大水門から運河エレベーター,モノレール,巨大重機といった「テクノスケープ」への興奮が率直な言葉で語られています.
最近は,日本の土木の中で,土木と社会を繋ごうという気運の高まりを感じますが,楽しさを外に伝えるのには,中の人が一番楽しんでいるのが最も効果的ですね.この本からは,著者の土木そしてドボクへの愛がビシビシと伝わってきます.これほど血の通っているガイドブックも珍しい.
巻末にはモデルコースの提案や,ドボク旅行のテクニックまで添えてあります.出版後3ヶ月近くですでに私の周りではすでにマストなガイド本になっている感がありますが,次号といわずシリーズ化への期待が否が応でも高まります.