ドイツ鉄道社に行ってきた!


ベルリンのドイツ鉄道ProjektBau社(DB ProjektBau GmbH)に表敬訪問してきました.特に公式にどこかに発表するような話でもないので、ここで報告.

昨年2013年,「鉄道橋のデザインガイド 」という本を翻訳出版した縁で今回の訪問の運びとなりました.(記念に本を二人で持って,パシャリと写真を一枚.左がオリジナルのドイツ語版,右が日本語版.)大企業の重役が、どこぞの骨とも知れない外国人に会ってくれるというのも,なかなか,ない話.折角の機会なので,挨拶がてら,デザインガイドのVol.2の発刊を首を長くして待っています,と催促してきました.

どういうことかと言うと、デザインガイドを発刊した2008年とはドイツ鉄道社(以下DB社)の体制が変わってしまったんです.そのために,もともと予定されていたデザインガイドのVol.2の発刊がずっと先延ばしにされているという状況です.

2007年にドイツ鉄道は有識者を集めた橋梁の専門委員会(Brückenbeirat)を社内に創設し、鉄道橋のデザインに力を入れています.具体的には,重要な鉄道橋の設計に際しては,常にこの委員会がその設計をチェックして,(意匠面も含めた)トータルで質の高い鉄道橋を作ろうという体制を作っていました.

ちなみに,デザインガイド本もこの委員会の成果の一つ.ヨルク・シュライヒ氏が,その委員の一人でデザインガイド本の中心的な著者です.


そもそも,なぜ近年になってDB社の意識が変わったかと言いますと,ドイツ鉄道社の元社長,ハートムート・メードルン(Hartmut Mehdorn)氏の存在が大きかったようです.

メードルン氏はかなりの敏腕かつ豪腕な人物なそうですが,シュライヒ氏と馬が合ったようで,氏の”橋梁は「Baukultur(建設文化)」の称号に値するものでなくてはいけない”といった考え方に深い理解を示し,それが実際の活動に繋がりました.そのメードルン氏ですが,2009年にDB社を退き,Air Berlin社で社長を務めた後,現在は,ベルリン新空港(Flughafen Berlin Brandenburg GmbH)の社長をされています.

メードルン氏去りし後,DB社はどうなったか.

新社長のもと,上述の設計体制が見直されてしまいました.もちろん,これは一概に悪いこととは言えません.橋梁建設は公共事業なので,色々なしがらみが絡み合います.トータルで質の高い橋梁を作らなくてはいけない,という想いだけではなかなか上手くいかないのが,難しい所です.

ドイツ鉄道のデザインガイド本が,日本で翻訳出版されたという事実と,今回の身分不相応なVol.2の発刊の”催促”が,今後のDB社の鉄道橋梁設計の良い方向への進化に,ほんの少しでも貢献できたら嬉しいんですが!

参考)
鉄道橋のデザインガイド: ドイツ鉄道の美の設計哲学 ドイツ鉄道 (編),ヨルク・シュライヒ ほか(著) ,増渕 基 (訳)

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