10/19/2015

もっと橋のコンペをやろう! 「橋梁デザインコンペのガイドライン」



 

今年の4月に,IABSE(国際構造学会)の「橋梁デザインコンペティション実施ガイドライン」の邦訳版が電子出版されました.翻訳者は久保田善明さん.なお,ガイドラインの英文のオリジナル版は2013年に出版されています.

橋梁は,何らかの障害物を超えて二点(またはそれ以上)をつなぐためのインフラですが,社会構造の変化や,建設技術の発展に伴い,それ以上の機能を要求されることも増えてきました.例えば,欧州の多くの国において,橋の建設によって都市のイメージを高めようとする試みが直実に増加しています.

このガイドラインは,橋の設計や施工の発注者,つまりコンペにおいてはその主催者となる行政機関に向けて主に書かれたものです.コンペについての包括的な情報やアドバイスがコンパクトな形でまとまっていて,30分程度で読めます.また,全編にわたって,実際にコンペによって選定されて実現された美しい橋の写真が散りばめられていて,かつ(おそらく電子出版だからこそ可能であった)全頁カラーの,見ているだけでも楽しい本になっています.

本書より (23-24ページ)

私が滞在しているドイツでも,橋梁デザインのコンペは多く行われています.「“デザイン”という統合的なパッケージ」(本文・藤野陽三氏の推薦文より)を競わせることによって,魅力的な橋梁を生み出すきっかけとなっているように感じます.

一方,残念ながら日本では橋のコンペはほとんど行われていません.数年ごとに各地で単発で行われてはいますが,これでは全体の知見として蓄積できている状況とは言えません.

ただ,日本の土木学会でも,土木デザインに競争性を導入するためのガイドライン整備に向けた検討が進められているそうです.この翻訳出版は,日本独自のガイドラインが完成するまでの橋渡し的な役割を担う点と,橋梁コンペの国際的な基準を知らしめるという2点で非常に大きな意味を持ちそうですね.

なお,本ガイドラインは,オリジナル版も含め,IABSEHPより無料でダウンロードできます.ただ,電子出版のプラットフォームであるISSUUでのユーザー登録が必要なようです.訳者の久保田さんより教えて頂いたダウンロード方法を最後に書いておきます.

  1. IABSEのサイトに行く
  2. ウェブページの上から5行目あたりにある「English or Japanese」の「Japanese」をクリック。閲覧が可能な状態になる。
  3. さらに、PDFをダウンロードするには、まずISSUUのユーザー登録(無料)が必要。
  4. その上で、閲覧画面の下の方にある「share」というボタン、または、Facebooktwitterのマークがある部分をクリック。
  5. ダウンロードボタンが表示されるので、それをクリックするとPDFがダウンロードできます



[参考文献]
[1]
 

10/14/2015

テンセグリティが赤ちゃんのおもちゃに最適な5つの理由




ありがちなタイトルはただの冗談ですが,たまにはネタも.

私がテンセグリティおもちゃに出会ったのは,かれこれ10年以上も前の旅行中,ヨーロッパのどこぞの街のおみやげ屋さんでした.おぉ,テンセグリティがおもちゃになっている!と興奮したのを覚えています.このアメリカのManhattan Toy (マンハッタントイ)社製の「Skwish(スクイッシュ)」は約30年前から販売されているロングセラーで,今では日本でも簡単に手に入るようです.

生後半年の赤ちゃんに実際に遊んでもらったら,非常に玩具として優れているのが分かりました.その理由を5つほど書きます.

まず1つ目の理由は,言わずもがな,その軽さ.少ない材料で表面積を稼げる,まさに究極の軽量構造物.非力な赤ちゃんでも軽々と(笑)持ち上げられます.

2つ目は,その掴みやすさ.テンセグリティの特徴である浮いた棒は,赤ちゃんの小さな手でも容易に掴むことができます.そして,浮いているからこそ,口にも入れ易い!まずは何でも口に入れて情報を得ようとする赤ちゃんには大変有り難い仕組みになっています.

でも,口に入れている時に,急に赤ちゃんが前のめりで倒れたりしたら・・と心配の方も大丈夫!万が一前のめりで倒れて全体重がかかっても,柔らかいので,全体が潰れるだけです.おもちゃ自体も,力が取り除かれれば,ゴムの力ですぐに復元します.

 
テンセグリティを構造体として用いようとすると,剛性の低さ(柔らかさ)が大きなデメリットになるわけですが,赤ちゃんのおもちゃと用いると,この特性さえメリットになるわけです.これが3つ目の理由.

そして4つ目は,上述したように,復元力があるので,かばんに雑に放り込んで潰れても問題ないですし,コンパクトに収納可能です.

そして5つ目は,賢くなる!「なぜどの棒同士も触れ合っていないのに,構造体として成立しているんだろう,これはさながら,引張(ゴム)の海に,圧縮材(棒)という島が浮かんでいるようではないか!」などと,赤ちゃんは考え込んでしまうので,脳みそが活性化されて賢くなります.

・・と,段々怪しくなってきたので,この辺で.お薦めのおもちゃです.



追記>
調べたら,近年特に評価が上がって数々の賞をもらっているようです.それも納得の質の玩具です.

2014 Family Choice Award 
2013 American Specialty Retailer Association, Best Toys for Kids Award 
2011 Dr. Toy, Best Classic Toy Award