今年の4月に,IABSE(国際構造学会)の「橋梁デザインコンペティション実施ガイドライン」の邦訳版が電子出版されました.翻訳者は久保田善明さん.なお,ガイドラインの英文のオリジナル版は2013年に出版されています.
橋梁は,何らかの障害物を超えて二点(またはそれ以上)をつなぐためのインフラですが,社会構造の変化や,建設技術の発展に伴い,それ以上の機能を要求されることも増えてきました.例えば,欧州の多くの国において,橋の建設によって都市のイメージを高めようとする試みが直実に増加しています.
このガイドラインは,橋の設計や施工の発注者,つまりコンペにおいてはその主催者となる行政機関に向けて主に書かれたものです.コンペについての包括的な情報やアドバイスがコンパクトな形でまとまっていて,30分程度で読めます.また,全編にわたって,実際にコンペによって選定されて実現された美しい橋の写真が散りばめられていて,かつ(おそらく電子出版だからこそ可能であった)全頁カラーの,見ているだけでも楽しい本になっています.
本書より (23-24ページ) |
私が滞在しているドイツでも,橋梁デザインのコンペは多く行われています.「“デザイン”という統合的なパッケージ」(本文・藤野陽三氏の推薦文より)を競わせることによって,魅力的な橋梁を生み出すきっかけとなっているように感じます.
一方,残念ながら日本では橋のコンペはほとんど行われていません.数年ごとに各地で単発で行われてはいますが,これでは全体の知見として蓄積できている状況とは言えません.
ただ,日本の土木学会でも,土木デザインに競争性を導入するためのガイドライン整備に向けた検討が進められているそうです.この翻訳出版は,日本独自のガイドラインが完成するまでの橋渡し的な役割を担う点と,橋梁コンペの国際的な基準を知らしめるという2点で非常に大きな意味を持ちそうですね.
なお,本ガイドラインは,オリジナル版も含め,IABSEのHPより無料でダウンロードできます.ただ,電子出版のプラットフォームであるISSUUでのユーザー登録が必要なようです.訳者の久保田さんより教えて頂いたダウンロード方法を最後に書いておきます.
- IABSEのサイトに行く
- ウェブページの上から5行目あたりにある「English or Japanese」の「Japanese」をクリック。閲覧が可能な状態になる。
- さらに、PDFをダウンロードするには、まずISSUUのユーザー登録(無料)が必要。
- その上で、閲覧画面の下の方にある「share」というボタン、または、Facebookやtwitterのマークがある部分をクリック。
- ダウンロードボタンが表示されるので、それをクリックするとPDFがダウンロードできます
[参考文献]
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