巡回展「Hello, Robot」のゲヴェルベ美術館(Gewebemuseum)での開催に合わせて建設された仮設のパビリオンです.
骨材とより糸から構成され,ロボットを使って建設されています.設計はETH ZurichのGramazio Kohler Researchのチーム.
公開されている動画(下記)を見ると,より糸を水平に移動させながら円を描くように垂らして置く,そしてその円の上に骨材を敷き詰めて軽く叩いて締める,その上にまたより糸を垂らして…というのを繰り返して層を重ねていったようです.
キャプチャー画像 https://vimeo.com/294086902 より |
この骨材は何らかの方法で,多少なりとも固められているんだろうと思っていたのですが,現場で見たら,骨材はそのまま置かれているだけのようでびっくりしました.手でほじればどんどん崩せるくらいにルーズです.
それを見てようやく,このパビリオンのすごさを理解できました.つまり,どこにでもある安価な材料を最小限度使って,再利用・再構成可能な,外荷重に耐えられる構造物を造る.しかも自由度の高いジオメトリーで.
という難題を,コンピュテーショナル・デザインと自動化されたファブリケーション技術で実現しているわけです.
特に再利用可能な部分,材料自体には全く手をつけてないので,解体しても別のところでそのまま材料を使ってまた作れるというコンセプトはすごい.
必然的にそうなるのでしょうが,地面と柱が連続化しているのも面白かった |
構造はどうなっているのか.説明がネット上にも見当たらないので推測するしかありませんが,おそらくより糸が円状に敷かれているのが鍵で,骨材が外に膨らもうとする力をより糸の摩擦で抑えているのかも.
粒状の物質からなる集合体を,形状保持が可能な一つのソリッドに変化させる.通常ナノ~メソといった小さいスケールで研究されているアイデアを,マクロスケールで試みている研究だそうで,2015年から進められているそう.
このパビリオンには,約120キロメートルの糸と約30トンの石が使用されています.
一部だけネットで補剛していました |
鋼製の屋根は施工段階では,仮支柱に支えられていたよう.柱の完成後,仮支柱が取り除かれています.わざわざ屋根を先にかけたのは,ロボットを雨などから守るためでしょうか.
屋根がどういう構造なのか,なんとか上から撮ろうとした頑張った図 |
美術館の方に,このパビリオンについて少しお聞きしました.専門家の方ではなかったので,情報の正確性は保証できませんが,屋根の重さは8トン.写真にある青いケーブルはファイバーのゲージで,これによって2,3日ごとに,変形量を計測しているそうです.確かにクリープは大きそうですね.
このシステムによる柱は何度か作られていますが,屋外で一定期間,しかも実際に屋根を支えているのは初めての試みのよう.
いくらアイデアが面白くても,実際への適用ではヴァンダリズムなど色々と考慮しなくてはいけません.なので,1ヶ月とはいえ誰でもアクセスできる公共の場で実現させたのはすごいの一言です.
https://www.gewerbemuseum.ch/en/exhibitions/rock-print-pavilion
Rock Print Pavilion – A research demonstration by Gramazio Kohler Research, ETH Zurich.
展示期間 04.10.18 – 04.11.18
場所 Gewerbemuseum Winterthur,スイス
author visited: 2018-10