マイヤールのシェル



先日「チューリッヒに行くのだけど何か見るものはありますか」と聞かれ,少々悩んでしまいました.と言うのは,その名声の割には,この街には見るべき建築物や構造物少ないように感じているからです.かの有名なスイス連邦工科大学(ETHZ)があり,橋梁あるいは構造デザインの世界では,よく名前が出てくる重要な街ではあります.



さて,何かあっただろうか.カラトラバのシュタデルホーフェン駅,ル・コルビュジエセンター,あるいは2013年に竣工された坂茂の木造ビル‥と,ここまで考えて,思い出したのがこのパビリオンでした.


RC製のシェルで,設計は,かの有名なロベール・マイヤール(Robert Maillart1872-1940)です.マイヤールといえばコンクリートのアーチ橋が有名なので,シェルのイメージを持っている方は少ないのではないでしょうか.このシェルは小規模で少々マニアックではありますが,現存している数少ないマイヤール設計のシェルという意味では貴重なものと言えます.



竣工は1908年.1902年に独立して自身の設計事務所を立ち上げた後の作品です.




パビリオンの足元には小さなプレートがあり,市議会名義で,このパビリオンでは(商業目的などの諸条件を除けば)どんな人間でも自説を述べても良い,と書いてあります.いわゆる,ロンドンのハイド・パークで有名なスピーカーズ・コーナーですね.


マイヤールについては日本語でもすでに多くの文献がありますが,橋梁デザイン的な観点からも無論,最重要人物の一人ですので,今後も機会を見つけて少しずつ取り上げていきたいと思います.
   

     
[基本情報]

完成年:
1908
機能、種類:
パビリオン
設計
Robert Maillart
構造形式
RCシェル
位置:
Bürkliplatz, Zürich, スイス
47° 22' 1.00" N8° 32' 27.00" E
アクセス:
チューリッヒ市内,湖畔のBürkliplatz内にあります.上述のシュタデルホーフェン(Stadelhofen)駅からも歩いて数分の距離です.


[参考文献]
[1]
BürkliplatzについてまとめられたHP
[2]

author visited: 2007-08


author