Unstruttal Bridge, Germany |
しつこいですが,もう少し鉄道橋のデザインガイド.大変有難いことに,色々な反応を頂けたので,忘備録も兼ねて,少しだけご紹介.
まず一つ目.橋梁と基礎 2013年7月号で,編集委員の野澤氏より書評を頂きました.
「最近のドイツの鉄道橋は景観を考慮していると一般的に言われていたが,今回ドイツ在住の増渕 基氏により「鉄道橋のデザインガイド」が訳されて出版された.
(..)前半は鉄道橋の設計とデザインの原則に関して,概念から環境との調和,ライフサイクルコストへの配慮,様々な案の比較とその評価方法などが写真やスケッチとともに説明されている.制約条件を克服するために設計とともに技術開発された鋳鋼製格点やインテグラル橋,スライド式軌道スラブの記述は経緯とともに今後の課題を含めた主張も多い.後半は平坦な場所での高架橋,河川橋,架道橋などケース別に提案例がタイプごとに解説されている.中にはスレンダーな橋脚・柱とスラブや基礎との接合部のディテールまで示されている.
(..)ドイツ鉄道が編纂したデザインガイドであるものの,ドイツ以外の地域でも,鉄道橋以外の橋梁をはじめとする構造物でもその設計の思想や手法は大いにヒントとなる.多くの橋梁技術者に読んでいただきたい.」
ブログでは,hachimさんより,心温まる感想を頂きました.
「構造デザイン本としては、久しぶりにワクワクドキドキと興奮しながら読み進めてしまうものだった。僕もまだまだ若いんだなって勘違いしてしまうくらい。それこそ、フリッツ・レオンハルトの『ブリュッケン』以来の興奮だと思う。ドイツ橋梁エンジニアリングの思想がはっきりと表明されたことへの清々しさが感じられる。」
何かからはみ出した、もうひとつの風景 ドボク的備忘録 - 鉄道橋の教科書
また,僕も毎回楽しく拝読している磯部さんのブログでも,出版のプロならではのご感想を頂きました.
「日本の新しい橋や架け替えの橋も、本書の提案例のように、「なぜその形になったのか」をもっともっと告知した方がいい。ダムのように、聴いてる人がいようがいまいが関係なく、公言し続ければいい。
(..)書籍としては高額だが、橋好きも道路ファンも鉄道ファンも土木構造物好きも、メインカルチャーとして真正面から「橋とは?」を問いかけてくる本書はぜひ「買って」読むといいと思う。読み終えると、「ただ、好き」という感覚的なところから一歩踏み出しているはずだ。」
轍のあった道 - 『鉄道橋のデザインガイド ドイツ鉄道の美の設計哲学』(ドイツ鉄道編/ヨルク・シュライヒ他著/増渕基訳)
以下、直接頂いた,あるいはネットで拝見した感想の一部から抜粋.ご迷惑をおかけするといけないのでお名前は伏せます.大分時間経ってしまっていますが,皆様ありがとうございました!
“ガイドラインというより、設計思想を伝えるデザインノートですね。辛口批評を遠慮会釈なく書いているし、これが3500円で入手できるのですから、多くの人に薦めたいと思います。”
“日本のリニア新幹線でもぜひ参考にしていただきたいですね。”
“デザインコンセプトおよびディティールが非常に明快に説明されており、一般の土木技術者にとっても、大変参考になると思います。“
“まず、本の美しさにうっとりする。写真はすべてモノクロ。たった3枚の扉のページとところどころの見出し文字に赤。 この装丁デザインにまず、学ぶこと大なり。”
“すでに多くの方が指摘されていますが、橋梁設計に関わる書籍としてブリュッケン以降を担うもの、というのは私も感じました。 過去から現在(当時)を眺め、その状況を読み解いたのが前者であるとすれば、現状から志向される未来を示唆するのが本書であると。”
翻訳出版はFootbridgeに続き,二度目でしたが,非常に根気のいる作業ですね.自分としては,自分のエンジニアとしての未熟さも含めて,不満足な点は山のようにあるのですが,とにかく出版できてよかった.どこかで見切りをつけないと,終わらない作業なので.鹿島出版会の川嶋さんのお力がなければ絶対出版まではたどり着けませんでした.