ロボットがつくる未来の石積み構造「Rock Print Pavilion」

先日,スイスのヴィンタートゥール(Winterthur)に「ロック・プリント・パビリオン(Rock Print Pavilion)」を見に行ってきました. 巡回展「Hello, Robot」のゲヴェルベ美術館(Gewebemuseum)での開催に合わせて建設された仮設のパビリオンです. 骨材とより糸から構成され,ロボットを使って建設されています.設計はETH ZurichのGramazio Kohler Researchのチーム. 公開されている動画(下記)を見ると,より糸を水平に移動させながら円を描くように垂らして置く,そしてその円の上に骨材を敷き詰めて軽く叩いて締める,その上にまたより糸を垂らして…というのを繰り返して層を重ねていったようです. キャプチャー画像  https://vimeo.com/294086902 より この骨材は何らかの方法で,多少なりとも固められているんだろうと思っていたのですが,現場で見たら,骨材はそのまま置かれているだけのようでびっくりしました.手でほじればどんどん崩せるくらいにルーズです. それを見てようやく,このパビリオンのすごさを理解できました.つまり,どこにでもある安価な材料を最小限度使って,再利用・再構成可能な,外荷重に耐えられる構造物を造る.しかも自由度の高いジオメトリーで. という難題を,コンピュテーショナル・デザインと自動化されたファブリケーション技術で実現しているわけです. 特に再利用可能な部分,材料自体には全く手をつけてないので,解体しても別のところでそのまま材料を使ってまた作れるというコンセプトはすごい. 必然的にそうなるのでしょうが,地面と柱が連続化しているのも面白かった...

良い橋って何?という人のための橋梁デザイン入門 - モランディの傑作を教科書として

驚くべきことに,晩夏のヴァーリ湖(Lago di Vagli)には全く水がなかったのである. 水面に浮かぶ凛とした姿が見れることを期待していたのに. 少々がっかりはしたけれど,しかし,それでもこの橋の佇まいには心打たれるものがあった. この橋にはほんの少しだけ思い入れがあった.出会ったのは,「Footbridges」を翻訳していた時である.美しい歩道橋が陳列されたショーケースの中で,この橋は独特の雰囲気を放っていた. 「Footbridges」 上がそのページの写真.そもそも橋の写真集なのに,写っているのはほとんど風景である.言われてみれば確かに写真左奥に橋は写っている.しかしこの橋は何も主張してない.それにも関わらず,この橋には惹きつけられる何かがある. こう感じていたのは別に私だけではなかった.八馬さんも同じように感じられていたようだった(はちまドボク 岬の上の小さな村)し,この本の紹介でこのページがよく使われているのもその証拠だ. そう,少しおごった言い方になってしまうけれども,この橋は橋が分かっている人ほど惹きつけられる,そんな魅力を持っているのである. 「この橋は必ずこの目で見なくてはならない」そう思いながらも,イタリアの山奥の村まで行ける機会はそうそうなかった.八年を経てようやく見ることができたのである. リカルド・モランディ(Riccardo Morandi)が設計したこの歩道橋は,トスカーナの村,ヴァーリ・ソット(Vagli Sotto)の貯水湖に架かるもので,ダム建設に際して1953年に造られた. プレストレスコンクリート製の3ヒンジアーチで,アーチ部のスパンは70mである. 40mという水面からの高さ,さらに幅員とのプロポーションを考えると,支保工を立てるのはどうしても不経済であった.さらには,同時進行していたダム建設によって橋の建設中にどんどん水位が上がる. 施工中の写真 ...

ジェノヴァの橋の崩壊は設計者モランディの責任か - 続報 - 現地に行ってみた

2018年9月の状況(著者撮影)  (この記事には事故現場の写真が含まれますので閲覧にはご注意下さい.) 前回の記事 > ジェノヴァの橋の崩壊は,設計者モランディの責任か モランディの橋の事故からおよそ二ヶ月.先日書いた記事のアクセス数は5000を超えていました.橋梁の枠を超えて,多くの人が関心を持った事故だったのがよく分かリました. 先日9月末日,事故の現場を見てきたので続報です. 構造デザイン的な観点からこの事故を振り返る この種の構造物の事故には複合的な要因がつきものです.今回の事故に関しては,維持管理の問題の側面が大きかったとは言え,それだけが原因ではないだろう,特に設計の面から事故にまで繋がった遠因はなかったのか,というのが前回の記事を書いた動機でした. 当時の最先端の技術で作られたものであったがゆえに,その後明らかになった"落とし穴"をどう考えるべきか. 2012年の状況 (写真: 八馬智氏 はちまドボク) 2018年9月の状況(著者撮影) 橋梁エンジニアの畑山義人さんは「構造デザインの本質は技術開発にほかならない」1)と書いていらっしゃいますが,設計者のモランディがこの橋で挑戦していたのは,(前回の記事で明らかにしたように)まさに技術開発でした.それこそが,この橋の事故が構造デザイン的観点からも,深く考えさせられる理由であるように思います. この事故の全体像を把握するためには,耐久性,合理性,施工性,社会性,景観などといった二次元の広がりだけではなく,歴史や時間軸までを含めた三次元での理解が必要です.この包括的な特性はまさに構造デザインの本質と言えるでしょう. モランディの誠実さ...
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